1.中小企業のシステム化

大企業に比して、中小企業のIT化・システム化は、進んでいない、と言われている。しかし、業務の効率化やコスト削減等のためには、人的努力だけでは限界があるため、システム化は避けて通れない課題と言える。
システム化を考える場合、まずは、以下のようなポイントがある。

(1)ソフトウェア開発会社に自社用のソフトを作り込んでもらい、さらにミニコンなどハードウェアを導入する形態が多かったが、今は、パッケージソフトの種類も増え、SaaS(Software as a Service)などの利用形態も出てきているので、従来より、システム導入に関するコストや期間が減り、リスクも小さくなっている。

(2)パッケージソフトウェア比較検索ポータルサイト「FIND-IT」を見ると多くのパッケージがあることがわかる。
(3)いきなり大掛かりなシステム化はリスクが高いので、パッケージやSaaS等を利用して、まず、着手できる部分から、システム化・IT化を進めていくことが肝心である。

以下、基幹系・業務支援系・ネットワーク系、及びシステム化によるリスクに分けて、説明する。

2.基幹系

財務・会計パッケージを導入している企業も多いと思われるが、他にも、人事・給与、顧客管理、生産管理、販売、在庫管理等、基幹業務に関連する製品が市場に多く存在する。基幹系業務は、会社毎に内容が違うため、パッケージを導入する際は、以下に留意する。
(1)現状の業務を見直す良い機会とも捉えられるので、現状の業務を分析し、業務の「あるべき姿」を明確にする。
(2)一斉に、全業務をシステム化するのはリスクが高いので、システム導入の費用対効果が最も高いと思われる業務をシステム化対象とし、段階的に他の業務もシステム化していく。
(3)パッケージ製品を複数比較し、自社にもっとも適合しそうなものを候補とする。
(4)パッケージの選定に当たっては、カスタマイズ性や、導入後のベンダー保守対応なども含めて、検討する。
(5)業務の「あるべき姿」とパッケージのフィットギャップ分析を行い、ギャップが生じた部分(ギャップは極力最小にとどめたい)に関し、カスタマイズ等を実施する。
(6)カスタマイズでは、充分に対応できず、独自に作りこんでしまった部分に関しては、導入後、ベンダーのサポートが受けられなくなる場合が多いので、注意することが必要である。

3.業務支援系

基幹系業務に比べ、営業支援(SFA)やグループウェア(スケジューラや掲示板・ワークフロー等)各社で共通する部分も多いので、中小企業にとっても、導入しやすい分野である。

(1)営業支援(SFA)について
営業活動は、企業において、中核となる分野である。従来は、各営業マンが、「足」で稼ぎ、とにかく外に出て、訪問回数を増やすやり方が中心であり、それである程度は成果も出たであろう。しかし、時代は変わった。需要のある顧客、取引額の多い顧客を重点的に管理し、日々の営業活動を記録し、それを、営業マン個人に閉じず、マネージャや経営層もその情報にアクセスし、フィードバックすることが求められる。限られた、人的リソースを効率化し、営業の生産性を上げると同時に、社長以下会社組織全体で、顧客フォローのしくみを作ることが求められる。
最近では「セールスフォースドットコム」のようなSaaSベンダがSFAツールを出しており、システム開発やハードウェア等の保有のリスクもなく、導入が容易になっている。カスタマイズも特にシステム知識がなくてもできるので、まさに中小企業向けのツールである。

(2)グループウェアについて
グループウェアは、LotusNotesやサイボウズ、desknet’s等が著名である。サイボウズ、desknet’sは、ベンダサイトから、ソフトウェアをダウンロードし、30日程度無料で試用してみることができる。スケジューラや掲示板、ワークフロー(社内稟議・決裁・承認等に利用)などが、標準的に備わり、これを全社員が共有することで業務効率の向上が期待できる。携帯電話からアクセスすることも可能なものもあり、出張中でも、メールを見たり、稟議承認が可能となる。最近では、ソフトを購入しないで、利用するだけの形態(SaaSモデル)も出てきているので、導入までの時間の短縮、ROIの向上などのメリットを享受できる。

4.ネットワーク系

もはや、インターネット接続環境のない企業を探すのが難しいほど、インターネットは普及している。特に昨今は、ブロードバンド回線によるインターネット常時接続が普通のものとなり、また、気軽にブログを作成し、個人レベルで情報発信をすることも容易になってきている。

(1)ホームページ
中小企業でもホームページをもつことが普通になりつつある。社外へのPRや、情報発信、全国への販路拡大等が期待できる。しかし、コンテンツをこまめに更新していかないと、序々にアクセス数は減り、企業イメージも悪くなりかねない。最近では、アクセス管理ツールも充実してきているので、アクセスの傾向を見ることで、マーケティング等にも活用できる。また、SEO対策も重要である。せっかくホームページを立ち上げても、検索エンジンの上位に出てこないと、多くのアクセスを期待できないからである。

(2)セキュリティ対策
インターネットやホームページは便利であるが、一方で、不特定多数のユーザとつながっているため、セキュリティ対策も必要となる。不正なアクセスによる社内ネットワークへの侵入を防ぐためのファイアウォールの設置や、拠点間通信を暗号化するためのVPN網(仮想専用線)の活用、ウィルスによる感染を防ぐためのウィルス対策ソフトの導入など、検討すべき項目は多い。

5.システム化によるリスク

情報化・IT化により、利便性が増し、業務効率の向上などプラス面もあるが、リスクも伴うので、事前にリスク分析を行い、予防・回避策を作成しておくことが望ましい。例えば、以下のようなものがある。

(1)顧客情報の保護
顧客情報保護法により、顧客情報の社外流出は相応の刑事罰が適用される他、企業のイメージを著しく低下させてしまう。流出経路としては、メールの誤送信など人的ミスによるものが多いので、社員教育の徹底など、社員一人一人に顧客情報の重要性を理解させておく必要がある。
また、顧客情報を収集する場合は、利用目的を明示しておく必要がある。

(2)事業継続性
事業のIT依存度が高くなるに連れて、万一、ITシステムが故障やネットワークの障害が発生した場合、業務が全面停止に陥る可能性が高まってくる。すべてのリスクに対応するのはコストがかかるので、業務毎に優先順位を付けて、リスクの高い業務に関しては、システムやデータのバックアップを図るなどの対策をあらかじめ、立てておくことが肝要である。できれば「障害対応マニュアル」を作成し、マニュアルに基づいた対応を取れるよう訓練などしておくと良い。

(3)全体最適化
中小企業には、あまり事例はないと思うが、中堅以上の企業で発生しやすいものに、システムの部分最適化がある。部門毎にバラバラにシステムを導入してしまい、その部門に閉じた業務には適しているが、全社をまたがった情報を収集するのが難しくなる場合がある。経営者としては、会社全体を俯瞰したいのは当然であるが、それをするために、スタッフ部門がバラバラのシステムから情報をかき集め、手作業で、月報等を作成している例も多い。また、システム調達コストも高くつく。社長以下経営陣もITに関するガバナンスに留意し、部分最適なシステムの寄せ集めにならぬようにしなくてはならない。


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